みなさんこんにちは。
こわがりパパこと「のマンボウ」です。
8月上旬に日米の株式市場において、株価の急激な下落が発生しました。
幸いにも株価はすぐに反転上昇し、暴落前の水準に戻りましたが、急激な株価の下落を経験し、自分の資産がどんどん減っていく状況に恐怖を感じたり、保有していた資産をパニック売りをしてしまった方もいるのではないかと思います。
「株価急落時に平凡な投資家がすべきこと、すべきでないこと5つ」でも記載しましたが、株価暴落時に我々平凡な投資家が絶対にしてはいけないことは、保有している株を売ることです。株価暴落時に個人投資家がどうすべきか気になる方は、下記リンク先の記事をぜひご覧ください。
そこで今回は、株価の暴落時にパニック売りをしないよう、資産を守る為のポートフォリオの一つである「オールシーズンズ戦略」について紹介します。
目次
この記事の結論
オールシーズンズ戦略とは景気には4つの季節があるという考え方に基づき「株式」「債券」「金」等の複数の資産を組み合わせることで、いかなる景気の季節においてもリターンを得ることを狙うポートフォリオです。
現代ポートフォリオ理論によると、オールシーズンズ戦略ポートフォリオは株式(S&P500)への集中投資と比べてリターンは35%程度まで減少してしまいますが、リスクは35%程度まで減少します。
ただし、レイ・ダリオ氏推奨の資産配分だと上記の通りリスクが大きく抑えられた結果、リターンも低くなったしまう為、自分流にアレンジしても良いと思います。
オールシーズンズ戦略とは
オールシーズンズ戦略とは、世界最大のヘッジファンド「Bridgewater」の創業者であるレイ・ダリオ氏が個人投資家に推奨する分散投資方法です。
Bridgewaterでは、レバレッジ手法を用いたり、一般投資家が購入することがかなわないような投資商品を使用し、どのような経済状況においても利益を上げ続ける為の戦略を取っており、この戦略はオールウェザー戦略という。
オールシーズンズ戦略は、ヘッジファンドのような高度な投資活動をしなくても、景気の季節(オールシーズンズ=あらゆる経済状況)にかかわらず個人投資家が安定してリターンを得ることを狙うポートフォリオの構築を目指す戦略です。
余談ですが、オールシーズンズ戦略という名称の由来には「オールウェザー戦略程のきめ細かな対応をしない為、全天候への対応は出来なくても、長期的な景気の変動(季節)には対応できる」という意図が込められていると感じます。
景気の変動 ー4つの季節
レイ・ダリオ氏は景気の変動は自然界の季節のように4つに分けることができ、それぞれの季節において強い資産が異なると語っています。一方で自然界の季節とは異なり、景気の季節は決まった順番で訪れるものではなく、次にどの季節が来るかは予測不可能とも語っています。
景気の季節 | 特徴 | 強い資産 | 弱い資産 |
経済成長期 | 経済成長が想定より高い | 株式、社債、商品、金 | 債券 |
経済停滞期 | 経済成長が想定より低い | 債券、TIPS | 株式 |
インフレ期 | インフレ率が想定より高い | 商品、金、TIPS | 債券 |
デフレ期 | インフレ率が想定より低い | 債券、株式 | TIPS、商品 |
これらの景気の季節のすべてにおいて資産の急激な減少を避け、リターンを生み出すことを目標とし、さらに、個人投資家が取り得るリスク許容度を考慮してポートフォリオを構築するのがオールシーズンズ戦略です。
オールシーズンズ戦略のポートフォリオ
先の考え方に基づき、レイ・ダリオ氏が個人投資家へ推奨するポートフォリオは次のようなものです。

資産クラス | 資産配分 |
米国株式 | 30% |
米国短期債券 | 15% |
米国長期債券 | 40% |
金 | 7.5% |
商品(コモディティ) | 7.5% |
オールシーズンズ戦略ポートフォリオの特徴
(1)ポートフォリオのリスクが非常に低く抑えられている
オールシーズンズ戦略ポートフォリオでは米国(短・長期)債券への配分を55%と高くしている一方で、米国株式への資産配分を30%程度に抑えることで、米国株式(S&P500)へ集中投資した場合に比べてリターンが1/3程度になりますが、リスクを同じ程度下げることに成功しており、株式の1/3程度に抑えられています。
このようにポートフォリオの比較的多くの部分をリスク(価格の変動の小さい)債券に割くことで、リスク許容度の低い個人投資家でも受け入れ可能なレベルまでポートフォリオ全体のリスクを抑えつつ、魅力的なリターンを得られるポートフォリオとなっています。
(2)債券への投資は長期債券だけでなく短期債券も織り交ぜている。
長期債券は利回りが高い反面、運用期間が長いことからリスクも比較的大きくなります。一方で、短期債券は利回りは低いですがリスクも低いという特徴があります。米国のような先進国はデフォルト(債務不履行)リスクが極めて低いと考えられている為、先進国の短期債券は無リスク資産として扱われることもあります。
このようにリスクの低い資産を適度に組み合わせることで、リターンを大きく損なうことなくリスクを抑えているのもこのポートフォリオの特徴と言えます。
(3)金や商品がポートフォリオに組み込まれている
金や商品は、株式や債券のように配当収入を生み出さず、価格の上昇によってのみ利益を出すことができます。
その様な金融資産をポートフォリオに組み込む目的は、株式との相関が低い(または無い)為、株式のリターンが期待できない景気の季節においてリターンを生み出す可能性がある為です。
資産の相関関係がポートフォリオに与える影響については、後日記事にまとめようと考えておりますので、そちらをご覧ください。
オールシーズンズ戦略ポートフォリオを作る為のETF候補
ここからは、実際にオールシーズンズ戦略ポートフォリオを自分で作ろうと思った際に、ポートフォリオへ組み込む金融資産の候補となるETFを紹介します。
各銘柄のリスク・リターン値は記事執筆時(2024年9月)の値となりますので、最新情報はリンク先より確認ください。
株式ETF
・VOO(Vanguard S&P500 ETF)
経費率:0.03%
10年リターン:+12.5%
10年リスク:15.3%
(my INDEX)より引用
バンガード社が運営するS&P500指数への連動を目指すETFです。S&P500指数への連動を目指すETFは様々な種類がありますが、バンガード社のETFの特徴は経費率の低さです。
S&P500指数への連動を目指す代表的なETFおよび投資信託の経費率を一覧にまとめてみました。長期投資をするにあたり、経費率はとても重要な判断基準になりますので、投資先選びにおいては必ず経費率を確認するようにしてみてください。
銘柄 | VOO | SPY | eMaxis Slim S&P500 |
経費率 | 0.03% | 0.09% | 0.09372% |
・VTI(Vanguard Total Stock Market ETF)
経費率:0.03%
10年リターン:+11.9%
10年リスク:15.7%
(my INDEX)より引用
こちらもバンガード社が運営するETFで、CRSP米国総合指数への連動を目指しています。CRSP米国総合指数は、米国株式市場に上場するほぼすべての株式4000銘柄から構成される株価指数の為、米国市場すべてに分散投資するのと同等のリターンを期待することができます。
・VT(Vanguard Total World Stock ETF)
経費率:0.07%
10年リターン:+8.5%
10年リスク:15%
(my INDEX)より引用
ひとつ前のVTIと名前が似ていますが、VTはFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスへの連動を目指すETFです。指数の名前は長くて覚えにくいですし、「名前」はそれほど重要ではないので、株式マニアになりたくなければ覚えなくても大丈夫です。この指数は米国、米国以外の先進国、新興国をふくむ47か国、9000銘柄の株式から構成される株価指数であることだけ覚えてください。
VTに投資をすることで、その名前の通り全世界の株式へ分散投資するのと同等のリターンを期待することができます。
債券ETF
・VGLT(バンガード・長期政府債券ETF)
経費率:0.04%
10年リターン:+0.7%
10年リスク:13%
(my INDEX)より引用
バンガード社が運営する米国長期国債ETFで、ブルームバーグ米国長期国債インデックスへの連動を目指します。
これも指数の名前は覚えなくてもいいので、米国長期国債ETFであることだけ覚えてください。
・VGSH(バンガード・短期政府債券ETF)
経費率:0.04%
10年リターン:+1.2%
10年リスク:1.6%
(my INDEX)より引用
バンガード社が運営する米国短期国債ETFで、ブルームバーグ米国国債1-3年インデックスへの連動を目指します。
短期国債ETFの為、リスクが長期国債ETFと比べて低いのが特徴です。
・TLT(iシェアーズ・米国国債20年超ETF)
経費率:0.15%
10年リターン:+0.3%
10年リスク:13.8%
(my INDEX)より引用
iシェアーズ社が運営する残存期間が20年を超える米国債で構成される指数への連動を目指すETFです。
iシェアーズ社は、米国の資産運用会社であるブラックロック社が提供するETFブランドで、世界最大のシェアを持ちます。
・BND(バンガード・米国トータル債券市場ETF)
経費率:0.03%
10年リターン:+1.6%
10年リスク:5%
(my INDEX)より引用
バンガード社が運営するETFで、ブルームバーグ総合債券指数への連動を目指すETFです。
ティッカーが投資対象(債券=Bond)そのものなので「何に投資しているのか分かりやすいETF世界ランキング」があれば表彰台間違い無しのETFです。
前述のETFとは異なり、長期国債だけでなく、短・中期国債も投資対象に含まれているのが特徴です。
レイ・ダリオ氏が推奨する資産配分から崩れてしまう可能性がありますが、オールシーズンズ戦略ポートフォリオにおける債券投資をこのETF1本にまとめてしまってもいいかもしれません。
金・商品
・GLDM(SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト)
経費率:0.10%
3年リターン:+12% (+6.5%)
3年リスク:13.2% (14.4%)
(my INDEX)より引用
金ETFで最も有名で資産規模が大きいETFはGLDですが(きっと「何に投資しているのか分かりやすいETF世界ランキング」首位の座をBNDと奪い合うETFでしょう)、GLDの経費率を下げたものがGLDMです。
GLDもGLDMも金への投資という点でリスクやリターンに大きな差はありません。
GLDMは2018年6月に設立されたばかりで10年リターン・リスクのデータがないため、データが取得可能な3年リターン・リスクを記載しました。
参考までにかっこ書きでGLDの10年リターン・リスクも記載しています。
・GSG(iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト)
経費率:1.01%
10年リターン:-4.1%
10年リスク:22.4%
(my INDEX)より引用
S&P GSCIトータルリターン・インデックスへの連動を目指すETFで、このETF1本で多様なコモディティ(商品)への投資が可能です。
ただし、2024年9月時点でSBI証券では本ETFは購入できないようでした。
オールシーズンズ戦略のリスクとリターン
オールシーズンズ戦略ポートフォリオを採用することで、単一資産に投資した場合と比較してリスク・リターンがどのように変化するかを計算してみました。比較に際して、それぞれの資産のリスク・リターンは(my INDEX)から取得した10年リスク・リターンのデータを用いています。

株式(S&P500)との比較
リスク :-65%
リターン:-65%
債券(長期/短期)との比較
リスク :-58%/+237%
リターン:+523%/+263%
この結果から、オールシーズンズ戦略ではリスクを株式の約1/3、米国短期国債に近い値まで下げられている一方で、リターンも株式と比較して約1/3まで下がってしまっており、安全性を高めることに重点を置いたポートフォリオになっていることが分かります。
オールシーズンズ戦略ポートフォリオを自分流にアレンジする方法
ここまで、レイ・ダリオ氏が推奨するオールシーズンズ戦略について説明をしてきました。
上で検討したようにレイ・ダリオ氏が推奨する資産配分だと、株式の割合が低く、債券の割合が高くなっている為、これから資産を増やしていきたい20代や30代の投資家にとっては、必要以上にポートフォリオのリスクが低く抑えられてしまっている、つまりリターンが低く抑えられていることが分かりました。
また、商品ETFであるGSGのリスクとリターンをみると、昨今のインフレにもかかわらず直近10年間のリターンがマイナスとなっており、ポートフォリオに組み込むことに疑問を感じてしまいます。
そこで、オールシーズンズ戦略をベースに各資産の配分を変えたり、商品ETFをREIT等リターンの期待できる別の資産クラスに変える等、自分流にアレンジをしてみることもいいかと思います。
自分流にアレンジを加えたポートフォリオの作成方法については、別記事にて説明をさせていただこうと考えておりますので、ぜひそちらの記事も参照ください。
この記事の結論
オールシーズンズ戦略とは景気には4つの季節があるという考え方に基づき「株式」「債券」「金」等の複数の資産を組み合わせることで、いかなる景気の季節においてもリターンを得ることを狙うポートフォリオです。
現代ポートフォリオ理論によると、オールシーズンズ戦略ポートフォリオは株式(S&P500)への集中投資と比べてリターンは約1/3程度まで減少してしまいますが、リスクも約1/3程度まで減少します。
ただし、レイ・ダリオ氏推奨の資産配分だと上記の通りリスクが大きく抑えられた結果、リターンも低くなったしまう為、自分流にアレンジしても良いと思います。